NHK教育テレビのJブンガクという番組。今週の作品は夏目漱石の道草 (新潮文庫)道草でした。
作品内の一部分が日本語で朗読されたあと、同じ箇所が英語訳で朗読されます。
今回取り上げられたのは『道草』の主人公「健三」少年が養母から
『健坊(けんぼう)、御前本当は誰の子なの、隠さずにそう御いい』
と言われるシーン。
健坊
この「健坊」というのが英訳でどうなっていたかというと……。
"Kenny(ケニー)"だったのです。
「健三」は普通に"Kenzo"だったので違和感なく聞いていたのですが、「健坊」がいきなり"Kenny(ケニー)"になったことで、急に世界観がアメリカチックな雰囲気になってずっこけました。ケニーって!(笑)
いや、確かに、読み通り"Kenbo"としたのでは、「健坊」の持つ、幼い子どもに対する呼びかけ的なニュアンスが伝えきれないわけですよね。だから訳としてはKennyが良いのだろうとは思うのです。
「チャールズ」が愛称の「チャーリー」で呼ばれるような感じですよね。
でもやっぱり、道草という、日本の古典的な文学作品の登場人物「健三」が「ケニー」なんて呼ばれていると、どうしても不思議な感覚になります。
それまで、白黒の日本映画を見ていたのが、急に「大草原の小さな家」(西部開拓時代のアメリカを舞台にしたドラマ)になっちゃった、みたいな。
ただの「Ken」じゃダメだったのかなあ。まあ、読者の対象として英語圏の人を想定しているんだろうから、やっぱり「Kenny」がいいのかな?