一昨年(2015年)の8月にぬか床を作ってから一年半。↓
ぬか床完成からすぐは毎日のようにぬか漬けを作っていたのですが、冬になってぬか床の味が落ち、味を戻すべくぬか床を休ませたことをきっかけに野菜を漬ける頻度が激減。
2016年の夏、ぬか漬け最適シーズンがやってきたことで再びきゅうりやナスを漬けて楽しみましたが、涼しくなってくるとまたぬか漬けから遠ざかり。
ぬか漬けは面倒を見るのが大変
……思うに、ぬか漬けってけっこう大変なんですよね。「漬けて、出す」サイクルが短く、漬けたからには2~3日のうちに取り出して食べなければいけないという「義務感」に追われるので、それが苦痛になってくるというか。
だから、野菜を漬けなくなってくる。
でも、野菜が入っていなくても、ぬか床の管理は続けなければいけない。
ぬか床をかき混ぜなくなってくる
清潔な手(ゴム手袋)でかき混ぜ、その後、ぬか床容器の壁についたぬかを清潔なフキンで綺麗に拭き取り。
野菜が漬かっていないのに、この作業をすることが、徐々に
……毎日かき混ぜなくてもなんとかなるかな? と思い始め、ぬか床をかき混ぜる頻度も少しずつ間遠になっていきました。
……そんなこんなで、2016年も終わりに差し掛かる頃には、ぬか床を混ぜるのは「五日に一度程度」になっていました。
異変
そこまで来ると、「ぬか床の存在」すら忘れがちになります。
ぬか床をおそらく十日間以上混ぜずにいた、2017年1月10日。
あ~、しばらくぬか床を混ぜていないなあ。そろそろ混ぜるか。
と、ぬか床容器のフタを開けた瞬間。
強烈な異臭が鼻を衝(つ)きました。
今まで、ぬか床からは色々な匂いが発されてきました。
アルコール臭、醤油のような匂い、熟したバナナの匂い。
「生乾きの洗濯物」のような臭いが出たことはわりとあって、でも、そこまで強い臭いではなかったし、そういうときは混ぜればすぐに直っていました。
しかし。今回の異臭は、今まで一度も嗅いだことがない。
純然たるアンモニア臭です。
ものすごく臭い。瞬間的に「もうダメだ」と思いました。
処分に傾く
管理も大変になってきていたし。できれば長くぬか床を保持して、熟成されたぬか床とはどんなものか知りたい気持ちもあったけれど。
もう面倒だ。続けられない。
一応ネットでぬか床のアンモニア臭について調べ、毎日よくぬか床を混ぜればなんとかなるかもしれないことがわかりましたが、そこまでする気が起きません。だってもしぬか床を復活させたとして、また野菜を漬けるようになる? ならないよね。
ぬか漬けをろくに作りもしないのに、ぬか床の管理だけせっせと毎日続けるなんて、気力がもたない。
たまにぬか漬けが食べたくなって、「ぬか床があればな~」なんて思うかもしれないけれど、そうなってもまあいいや。
私の心は、80%くらい、「ぬか床処分」に傾きました。
ぬか床をビニール袋に入れてそのままゴミとして捨てれば良いかな。そんなことまで考え始めていました。
老子の言葉「どんなことも見捨てない」
けれど私の心にはまだ一片、迷いがありました。
せっかく一年半も維持し続けてきたぬか床……。処分したいけれど、本当に処分して良いのだろうか。
そんな風に迷ったとき、いつも必ずひもとくのが「柔訳 老子の言葉」↓。
↑今ある問題を心に思い描きながらパッと適当に本を開くと、必要な示唆が含まれたページが出てくる(ような気がする)のです。
そこで開いた「柔訳 老子の言葉」。
出たページは「第27章 どんなことも見捨てない」。
『聖人は、どんな物であっても見捨てません。(略)老子は、物事や人物を「活かす」こと「再生させる」ことができる達人だったのでしょう』(引用:谷川太一著「柔訳 老子の言葉」経済界p117,118)
「見捨てない」「活かす」「再生させる」……。ここを見て、私は「う~~ん!」と唸るような気持ちになって目を閉じました。
そうか……。聖人はどんなことも見捨てないのか……。あのアンモニア臭プンプンのぬか床でさえもきっと……。
そうか……。見捨てないって良い響きだな。私もあのぬか床を見捨てないで頑張ってみようかな。
80%「処分」に傾いていた私の心のメーターが「再生させる」にバッと振り切れました。
ここから、「アンモニアぬか床」の、怒濤の復活作戦が始まります。
復活させる
まず、その日(1月10日)のうちにぬか床をよく混ぜ、弱った乳酸菌を復活させるべくキャベツを漬けました。
そして、常温管理していたのを、悪玉菌の動きを抑えるため冷蔵庫に移動。
その後、
・7日目(1月17日)に「生ぬか100g」「塩7g」「昆布30g」を加えてキャベツを取り替える。
・その後は二日に一回ぬか床を混ぜる。
・19日目(1月29日)にキャベツ取り替え。
↑上記「19日目」、それまでどんなに混ぜても残っていたかすかなアンモニア臭が消え、ぬか床の調子が良かった頃の、フル-ティーな香りが戻ってきました。
ぬか床自体の味も、アンモニア臭がひどかったときは酸味がすっかりなくなっていたのですが、ほどよく酸味が出てきて乳酸菌の復活を感じさせました。
……あのひどいアンモニア臭、もう無理かと思っていたけれど、これはいけそうだ!!
その後、二日に一回のかき混ぜを続けながら、22日目(2月1日)に再び「足しぬか」をし、今日に至ります。
ぬか床は完全復調を遂げたと言えるくらい安定を取り戻しました。
匂いはぬか床の意思表示
今回の出来事を通じ、ぬか床の意志というものを感じました。
ぬか床は自分で動けないし、言葉を発することもできません。
そんな中、唯一できる意思表示が匂いなんだろうなと。
悪臭を発することで、自分の状態を知らせる。
人間でいえばイライラした状態。そんな、イライラしたぬか床を、同じイライラで処分するのも自由だし、可哀想に思って手をかけ、復活させるのも自由。
その二つの自由の中で、復活させることを選べたのは良かったなと思います。
それにしても機嫌を損ねるとアンモニア臭を出すなんて、ぬか床もすごい意志伝達手段を持っているものです。
今後は、ぬか漬けを頻繁に作ることはなくても、ぬか床維持のための「キャベツの捨て漬け」だけは続け、保管は冷蔵庫にして、ぬか床管理があまり億劫にならないよう工夫してやっていきたいと思います。
(追記:その後、冷蔵庫保管になったことに油断して二ヶ月放置。ぬか床にカビを生やしてしまいました!↓)